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幻の野生白茶

4月末の週末に、友人に誘われて浙江省西部の安吉まで足を延ばし、白茶の産地を探索した。
安吉市の街から車で30数分ほど山を登り、道の奥にある山村に辿り着いた。
少し休憩をとった後、村のおじさんに案内されて、野生の白茶を探しに山を登り始めた。


白茶の茶湯の色は緑茶より薄く、味も淡白で、アミノ酸が緑茶より多く含まれており、まろやかな味がする。
稀少な品種で、ここ安吉が原産地。
環境が似ている隣の江蘇省の一部でも栽培があるものの、量が少ない。


屈折した山道を背にして、竹藪を通り抜け、標高900m位のところに到着した。
これが野生の白茶樹だと案内者が指を指した。
20120521白茶1

一見どこかで見たことのある街路樹のような葉がやや大きい灌木。
えー、これが茶木?
今までに見慣れていた葉が小さくて、樹形がよく整った茶木とは違った風貌だった。
新芽を摘まんで噛んでみると、以外に美味しかった。ほんの少しお茶の渋みがあったものの、甘味がはっきりしていて、今までに味わったことのない茶葉の味だった。

20120521白茶2



その山を降りて標高800m位のところにある、村民が管理をしている茶畑に到着した。
村より標高が200mほど高く、肥料を運ぶのが大変だということで、管理といっても剪定や除草などの作業に留まり、肥料は落ち葉以外一切やってない。自然農法風の茶畑だ。


20120521白茶3



更に山を下り、村に近い所に来ると、茶摘み作業をしているお婆ちゃんたちに出会った。
40歳以下の若衆がほぼ全員村を出てしまったため、村は高齢化が進み、茶摘みの主力は70歳前後の女性たちだった。

6、7年前に日本からJONAの会員を連れて、同じ浙江省の有機茶産地を視察したことがある。
その際に、お茶生産を営んでいる方が、「日本では茶摘作業の労働力確保が難しい」と嘆いていたことをよく覚えているが、現在の中国も同じ問題に直面している。

案内者の話では、お茶の新芽を採るのにはタイミングが大事であるが、茶摘み人数が足りなく、また年配女性の作業効率が低いため、相当お茶の新芽が採取できていないとのこと。

20120521白茶4



村の事務所で、野生・不施肥管理・施肥管理 の三種類の茶が用意され、小さな茶品会が開かれた。
通常の緑茶の味に慣れているせいか、個人的には通常の施肥管理の白茶がコクがありとても美味しかった。
野生と不施肥管理の白茶は淡白すぎると感じたが、現地の人々はやはり野生茶と不施肥茶が美味しいと自慢していた。
味の慣れというものもあるが、自然そのままの環境を、心から愛していることの表れであろう。


希少価値のため、今年の一番摘みの野生白茶と不施肥管理白茶の市場価格は、500gで10000元(約12.5万円)だそうだ。
試飲の際に飲んだ一口はいくらかなと帰りの車でずっと計算していた。

(胡杰)


2012.05.21 15:52 | 世界のオーガニック情報 | トラックバック(0) | コメント(0) |

季節の養生法と有機農業

私が上海で使っている携帯電話に、生活情報配信サービスがあります。
毎日主なニュースの他に、天気予報や季節に応じた生活習慣及び健康につながる食べ物に関することなどが配信されます。春になることにつれ、次のようなメールが来ました。

『春は冷暖交替が激しく、食性が温性の食べ物を摂食したらよい。鶏肉は脾を暖めて気を補い、五臓によく、虚損を補う働きがあり、体の虚弱による無気力感を緩和させ、免疫力を調整する効果がある。』

『乾燥していた冬に代わって、春には雨が多く、環境中の湿度が高まるにつれ、人間体内の湿度も高まる。この季節には山芋、薏米(ハトムギの実)を多めに摂食したら健脾排湿の効果がある。山芋、ハトムギの実、ハスの実、ナツメ(乾物)、ヒエと一緒に煮込んでお粥にする。お粥ができたら少々の砂糖を入れ、味を調えて出来上がり。山芋とハトムギの実は何れも美白効果があり、女性がよく食べたらよい。』


このようなメールが来て、日常の暮らしや健康管理に役立っています。


これらの生活習慣と健康に関する情報配信の多くは中国伝統医学(中医学)の経典である【皇帝内経】の理論に基づいたものです。
二千年余り前の漢の時代に書かれた人体のメカニズム、健康と季節環境の関係、病気の由来などに関する理論は未だに人々の健康維持に活躍しています。

金、水、木、火、土, 曜日に似ていますが、曜日でなく、中医学でいう五行のことです。
古代中国の人はこの五つの物質が宇宙の基本要素と認識し、人間の体もまた一つの小宇宙と捉えます。
五行は体の臓器と次のように対応します。
  金→肺/大腸
  水→腎/膀胱
  木→肝/胆
  火→心/小腸
  土→胃/膵

中医学でいう臓器は西洋医学の解剖学上の臓器よりもこれらの臓器の大まかな機能のことを現わす意味合いが多い。
土と対応する胃と脾臓に注目して頂きたい。この二つは消化、つまり食物を人間が吸収できる栄養物質にする役割です。

これは自然を良く観察してできた素朴な理論だと思いませんか。
土の中で有機物質が分解され、植物が利用できる栄養が作られており、有機栽培が成り立つのはまさしくこの土の威力から来るものではないでしょうか。


五行の理論では相生相剋もあり、つまり金は水を生み、水は木を生み、木は火を生み、火は土を生みという関係と、金は木を剋、木は土を剋、土は水を剋、水は火を剋、火は金を剋というような相互関係があります。

五行説ではまた、四つの季節と人間身体の関係を次のように関係付けています。
  春(旧暦1~3月)→肝
  夏(旧暦4~6月)→心
  長夏(旧暦6月)→胃
  秋(旧暦7~9月)→肺
  冬(旧暦10~12月)→腎

春には植物(木)が冬から蘇生し、木が対応する臓器は肝なので、春には肝臓の働きが一番活発。
肝機能をメンテしようとすれば、この春に肝臓の健康管理が大事。

【皇帝内経】の教えでは、春に早寝(夏は早起き遅寝)早起きして庭でゆったりした衣装を着てゆっくり散歩し、気分を穏やかにします。肝臓は喜びの感情により機能が向上し、怒りは肝機能に障害をもたらす。
皇帝内経の教えは短期的にできたものでなく、古代中国の賢人達が長い歳月にわたり自然、自然と人間の体の関係をじっくり観察、吟味して得た人間の健康や病気に関する知識の纏めです。

病気の治療に関しても、西洋医学のように薬や抗生物質をもって菌やウィルスを殺すような発想でなく、先ずは体の調子を整え、人間自身の免疫力を高め、次に、病気となる条件を無くすようにして治療するわけです。
典型的な例として、2004年に中国で猛威を振ったSARSの治療に当たっては、SARSウィルス治療の特効薬がなかったので、西洋医学のあらゆる手が尽くされていた上、漢方薬も治療に使われていたのです。
中医学ではこの怪病に関する認識として、春に発生する疫病は気温が暖かくなり、雨が多く降るようになって、環境中でも、人間の体内でも湿度が高くなって、疫病になるものの生息環境ができたため発病したと捉え、治療方法ももっぱら体内の湿を除去する生薬と人間自身の免疫力を高めるものと組み合わせた処方で治療に臨み、一定の効果をあげたそうです。


中国伝統医学の病気治療への考え方は有機農業でも同じ理屈だと言えるのでしょう。
害虫や病気が発生してから対処療法的に防除するのではなく、最初から病虫害の発生をさせず、健康な作物を作るのにはどうしたらいいかと考えるのです。
これはまさに作物の養生学とも言えるものです。
人間にしても植物にしても、健康が損われるのには似たような部分があり(もちろん、人間はもっと複雑です)、環境が壊れれば、同じ環境にいる私たち人間もまた植物も病に罹りやすくなります。
故に、我々は環境、人間、動物、植物、微生物などをトータルに意識して、有機的な心をもって、有機的生産をし、有機的な生活を送ることが望ましいといえるでしょう。

2012.04.10 14:25 | 世界のオーガニック情報 | トラックバック(0) | コメント(0) |

ナツメの話し

中国でよく見かける果物をあげると、リンゴ、ナシ、ミカン、オレンジ、バナナ、キウイフルーツなど日本とあまり変わらないが、唯一中国で人気が高くて日本であまり食べられてないのはナツメ(棗)でしょう。

ナツメ1



約2500~2800年前のことが書かれている古典詩集である「詩経」にナツメに関する内容があったように、ナツメは古くから中国で栽培され、食されてきました。
ナツメは栄養分が少なく旱魃気味の山土にも耐えられるので、明王朝の初期には食料不足を備えるため、役所が各農家に毎年1万本~2万本のナツメの木を植えさせていました。
そのおかげで、今華北地域では大量の古いナツメの木が残されています。黄河領域の陝西省、山西省、河北省、山東省は中国ナツメ生産量の8割を占めている。

古いナツメの木
ナツメ2




ナツメの中国語の漢字「棗」の発音は「早」と同じであり、落花生の「生」の字とペアにして、「棗(早)生」。
これは、早く子供を授かるようにとの祝いの意味が込められ、結婚式に必ず出てくる縁起ものとなっています。



生のナツメにはビタミンCが豊富で、300~600mg/100gの含有量があり、リンゴやミカンなどの果物より遥かに多い。
但し水分が少なく、食感はリンゴやナシより劣り、傷めやすいので通常は乾燥品として保管され、食用にされる。

ナツメ3




明の時代に書かれた中国生薬の集大成作である『本草綱目』でナツメについて、次のように書かれている。
ナツメの味は甘く、性は温かい。脾胃の気を補い、血を養って唾液の分泌を促す(中医学では唾液の分泌量も健康指標の一つとなっている)。
ナツメは脾胃の虚弱、栄養不良、気血欠損によって顔色の蒼さを緩和することができる。
乾燥したナツメを経常的に食すると、美容と老衰防止の効果があり、特に女性の顔色を綺麗にし、健康的な白さを保つことが知られており、古くから美容食品として注目されてきた。
またナツメは温性のため、血液循環を良くする効果があって、食べると冷え症を改善すること言われている。

ナツメ4




食べ方はそのまま乾燥品のナツメを摘まんで食べる他、米と一緒に煮込んでお粥にしたり(米60g、ナツメ10個)、ナツメと白キクラゲ及び皮を蒸したナシと一緒に煮込んで食べたり(冬は暖かいうちに、夏は冷やして)、ナツメと竜眼の果肉及びクルミの中身と一緒に煮込んで食べる(冷え症に効くらしい)などがある。

中国では有機認証されたナツメ産地もあり、ナツメ乾燥品の他に、ナツメ汁、ナツメ濃縮液、ナツメとクコの実を一体にした濃縮液などの商品が開発されて、食べ易いように工夫されている。

(胡杰)

2012.02.09 12:41 | 世界のオーガニック情報 | トラックバック(0) | コメント(0) |

中国有機生薬の話

日本の方々が漢方や生薬と聞いたら、おそらく体に効く健康イメージが湧くのでしょう。

確かに、野生の生薬なら、生物多様性に恵まれた野原や林に自生し、生息に適した環境で育っているため、病気もなく、虫もあまり付かずにすくすくと生育しています。
大自然の恵みともいえる生薬の薬効も良く、人間の健康維持にいい成分をたっぷり含んでいます。但し、野生の生薬は量が少なく、漢方薬市場において必要とされる量を賄えないので、生薬の人工栽培は大分前から行われています。

単一品種、大面積生産になると、元々一定の忌避効果を持つ生薬も病虫害に罹りやすくなり、化学農薬が普通の野菜栽培と同じように撒かれることになります。典型的なのが皆良く目にするクコの実です。
中国の北西地方はクコの一大産地で、延々とクコ畑が続いています。
大量生産するクコは根腐れ病などの病気やウリバエ、アブラムシ、ダニ等何種類の虫に罹りやすく、化学農薬の使用は当たり前のことです。
ここ数年、人々の食物の安全性への関心が益々高まっている背景のなかで、一部の生産業者はクコの有機栽培を始め、既に中国基準の有機認証を取得しています。
現地の政府系の農業技術サポート部門は有機クコの栽培規程を公表して、栽培技術の規範化を図っています。

クコ1


クコ2


現在、中国では約50社の生産企業(注)が有機生薬の生産を行い、有機生薬は100種類位があります。
栽培品目はクコ、杜仲(とちゅう)、白芍薬(しゃくやく)、丹参(タンジン)、天痲(テンマ)、刺五加(エゾウコギ)、五味子(ゴミシ)、金銀花(きんぎんか)、雪蓮(セツレン)、甘草(カンゾウ)、朝鮮人参、西洋ニンジン、甜菊(デンギク)、田七人参、紅花、鎖陽(さよう)、サージ(沙棘)、銀杏、桑などがあげられます。
このうちの一部は健康維持や強壮を目的に中国の人々が日常的に服用しているものが含まれており、EU規準の有機認証が取得されて、輸出されているものもあります。国内外の市場ニーズに従い、益々有機栽培の規模、アイテム数が増加していくと思われます。


注: WTO加盟後中国では農業の生産性を上げる為に、農業生産への企業参入を薦める体制があります。コストが掛かり、生産の規範化を要求する有機認証を取るのには企業によるものが殆どです。


(胡杰)


2011.12.09 13:01 | 世界のオーガニック情報 | トラックバック(0) | コメント(1) |

中国の有機花卉(オーガニックフラワー)の話

幼い頃にお婆ちゃんが庭に植えていたバラの花びらを集めて、ジャムにし、甘くて濃い紫色のジャムをお粥に入れたり、饅頭に塗ったりして食べ、濃厚なバラの香りがしていたのは未だに鮮明に記憶している。
無題



中国では古来から花を食用にしたり、病気を治す生薬にしたり、また、化粧品の原料とする文化があった。


ユリ科の黄花菜(英文名:Daylily)は夏の食卓の定番の一つとして市民に好まれ、その若芽の乾燥品は金針菜といって乾燥野菜の名物として名が知られている(但し、生のもの、乾燥品の何れにも微毒があり、料理する前に2時間ほど水につけて毒を抜く手順が要る)。
黄花菜

黄花菜(古名:萱草)


日本の方々になじみのジャスミンティーに入っているジャスミンも食用花の代表の一つである。

近年、食料の安全、安心嗜好が広まっている中国で、これらの口にするものやスキンケア等に使われる花も有機栽培され、各地に有機のバラ、有機ジャスミンなどができるようになった。

有機のバラは主に黄河流域の甘粛省や山西省で栽培され、他に新疆ウイグル自治区や黒龍江省や四川省にも生産業者がある。
関連商品は有機バラ精油(オーガニックローズエッセンシャルオイル)、パウダー(オーガニックローズパウダー)、乾燥花びら(オーガニックドライローズ)、バラソース(オーガニックローズソース)等がある。
何れも中国規準の有機認証を取得している。
中国ではバラを長期間食用すると美肌効果が高いと古くから伝われている。
バラ2 

お茶用のバラ



有機ジャスミンは主に広西省や四川省で栽培され、主に有機ジャスミンティーの生産に使われている。
ジャスミン 

ジャスミン



中国の旅行時によくレストランで出される菊の茶用の有機食用菊も、蘇州や上海近郊及び広東省で生産されている。
菊花茶 

菊花茶

                                        (文:胡杰)

2011.10.14 13:41 | 世界のオーガニック情報 | トラックバック(0) | コメント(0) |

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